夢を生きる

私のこどもたちへ、母ちゃんについて書きます。

言葉 : 戦争産業と平和産業

この社会は今、戦争産業と平和産業とのふたつに分かれています。弾丸や戦車など戦争をするために必要な武器を作ったり、戦争が起こることでお金もうけをすることが戦争産業です。

 戦争産業の人というのは、目的がはっきりしています。

 ものを破壊し、人を殺しても、自分たちが世界を征服しよう、彼らの精神がそこでぴたりと一致しています。だからその力はものすごく強い。

 ところが平和産業の人たちは、みんな理想主義者です。ついお互いを批判し合う。

 たとえば「どうやって平和を獲得するか」という議論でも長々とディスカッションします。

「あなた方の考えは間違っている」

「こうしなきゃ平和は勝ち取れない」

 というように平和産業の人たちはお互いに批判することに時間を使って、戦争産業の人たちのように意見をぴたりと一致させることがなかなかできません。

 エネルギーを会話や議論に費やすばかりで一致団結して目的に向かっていくことができないのです。それだから平和産業の人たちは弱い。

 平和に向かって進むのなら、まずはお互いを理解し合うことです。

 あなたと違った立場の人でも、その人はあなたと同じ平和を愛する人なのだということで、

「平和を愛してくれてどうもありがとう」

 と、まず受け入れてみてあげてください。

 あなたのやっていることも、私がやっていることも、とにかく私たちが平和産業に参加しているだけでありがたい。

 だから人間としてお互いに認め合う。それから愛し合う、尊敬し合う。

 

 

オノ・ヨーコ(2009)『今あなたに知ってもらいたいこと』幻冬舎, pp. 92-94